浅地さんがキッチンにきた。
『お前の色管理、バレてる』
せっかく頭から降りた血が、また頭にのぼった。
『おい、バレてるじゃねぇだろ、仕事だ』
つい、タメ口になった。
浅地さんは僕を救出するために割り込んできてくれたのに、僕の方が熱くなりつっかかってしまう。
まぁ、これも見慣れた光景だ。
浅地さんは露骨にイラっとしながら
『冷静になれ』
と言った。
僕にとってこれが冷静でいられるかと思ったが、一度頭を冷やす。
浅地さんが状況を説明した。
・お偉いからしたら実際、売り上げをあげればなんでもいい
・ただ、風紀として認定すれば罰金が取れる(お偉いさんのこずかいになる)
【船橋WIKI】-風紀-
水商売風俗においてボーイ側とキャストが恋に落ちること。
どの店舗も厳禁であり、今はないにしろ少し前であれば
「罰金200万」という決まり(法的効力はないが)はどこにでもあった。
・浅地が説得して100万くらいは納得させろ
・今後は、公認という形で、その管理を認める
というものだった。
これは、ただの幹部連中のこずかい稼ぎだったのだ。
そして、浅地さんはさらに口を開いた。
『今までも、そういうケースはあった。
幹部で山分けらしい。
今回も給料から少しずつ天引きでお咎めなしだと。』
僕は笑った。
『やってられねぇ』
ついつい口走った。
『女全員引き抜いてやめていいっすか?』
浅地さんは、
『冷静になれ』
しか言わなくなった。