僕の成果はあっという間にグループの系列店に広まっていった。
色々な系列店舗から、勉強としてキャストさんの担当を持った人間がやってくる。
また、僕自身も他の店舗へ行くことが増えた。
かなり色々な人から、どのようにその成績をあげているか聞かれ
様々な管理でキャストさんを掌握していた中でも、色管理だけは堂々と公表せずにいた。
この時から心の中で、邪道だと思っていたのかもしれない。
色管理は紙一重なのだ。
一歩間違えると、勘違い野郎である。
船橋が偉くなったと実感してしまった出来事がある。
ここ最近多くなった系列店の視察。
基本的に偉くなって系列店を視察する場合、高みの見物のようにホールを見渡し
営業が終わると改善点等をアドバイスするケースが多いのだが、僕は違った。
系列店でボーイがやるような仕事をこなした。
何食わぬ顔で、系列店のホールに立ち通常の仕事をこなす。
それは系列店のまだ組織の全体を把握していない下の役職のボーイからは
ただのボーイ研修に来た同役職の人間に見えたようだ。
あるボーイが僕に話しかけてくる。
『俺高橋!よろしくね!〇〇店から研修で来てるんでしょ?』
船橋は偉ぶるのは好きではないので話を合わせて、
『まぁそんなもんです!よろしくお願いします』
と返した。
近くにいた、系列店の役職者が焦ったように、そのボーイを咎める。
『お前、誰と話してるのかわかってるのか?
この人は〇〇店の船橋さんと言って俺より上の役職だ。
タメ口聞いてるんじゃねぇ』
僕は、あぁなんか偉くなってしまったなぁと思った。