船橋は色管を極めた。
いや、元々極めていたものが使えることに気付いて応用して使用したに過ぎないかもしれない。
兎にも角にも、僕は店のキャストさんを掌握した。
時期は、これから年末の繁忙期が来ようとしている時だった。
水商売の繁忙期とは一般的にボーナスが入った後の、「7月」と「12月」だ。
繁忙期はとにかく頭数を揃えたい。
お客様は黙ってても大量にやってくる。
機会損失だけは避けたいのだ。
繁忙期はキャストさんも稼げるが、とてつもなく忙しくなる為、疲労感も半端ではない。
そんな中、毎日出勤を60人は揃えたいという形になった。
普段、週に2日の出勤の人には4位にしてもらう事になる。
これはキャスト担当の腕の見せ所だ。
しかし、こんな作業は僕にとってはもう朝飯前だった。
それよりも、本当の腕の見せ所だと思っている部分は
繁忙期に馬車馬かのように仕事をしてもらったキャストさん達を、繁忙期後いかに出勤を落とさないかだ。
12月に限界まで仕事をしてもらって、さらに1月の正月、その後閑散期が訪れても出勤が崩れない。
これこそが、船橋が考える女の子担当のプロであった。
そこで船橋は管理方法の分別をした。
そのキャストに合った管理方法
当たり前だが、キャストさん全員に色管をしたらまず船橋の体が持たない。
そしてキャストさんのタイプによって、ベストな管理方法は違う。
よくあるのが、自称色管得意くんが色管を向かないキャストに仕掛け、燃えてしまうものだ。
こんなのはレベル1であり、ただのうざいジジイだ。※このミスを犯す人のほとんどがジジイタイプ。
さて、分別の話に戻ろう。
色管
これは前述の通り。
右向け右で右を向いてもらう事が出来る強力な管理方法。
副作用が強い。
頼れる背中管理
王道中の王道でありながら、自身が仕事をかなりできなければいけない。
仕事の信頼感、普段の感謝から多少無理な話も聞いてくれるような管理方法。
例)普段お客様トラブルや、延長交渉で助けてもらっている船橋さんの頼みならここは頑張ろう。
マネジメント管理
人の心を読み切る能力が必要。
まさにマネージャーとして、こちらがスケジューリングをしてしまう。
毎週毎週の濃いミーティングが必要であり、さらにキャストさんになったつもりで
プライベートのシュケジュールまで組んでいく為、負担は大きい。
またもや計算通りに事態を納める船橋
僕はこの3つの管理方法を的確に分別し、キャストさんに当てはめた。
この年の12月は、年末付近にもなると、キャストさんの疲労も限界ギリギリに達していたが
大盛況、記録的売り上げを上げることに成功した。
そして何と言っても、新年の出勤が取りにくい時期と疲労困憊が重なっているにも関わらず
1月の平均出勤数も悪くない数字を納め、圧倒的実力を示したのである。