ep14:風俗店舗スタッフ入社半年で異例のスピード出世をする船橋

第1部:船橋ブラストーリー

僕は、無茶振りを乗り越えた。

営業終了後ミーティングが終わると浅地さんが声をかけてきた。

『ナイス!今日飲むべ?』

僕と浅地さんは客席に腰をおろし、店のビールで乾杯した。

すでに酔いが随分と回っている浅地さんが言った。

『船橋、覚悟できてるか?』

僕は、今日この無茶振りを乗り切ったばかりでなんの覚悟かと思った。

覚悟は今日の夕方にして、やりきったはずだ。

ただ、僕はこのような場には”いい目”をして『はい』と答えることが良いことだと知っていた。

その通り、実践する。

なんの覚悟かはわからず。

すると浅地さんは

『一気にごぼう抜きするぞ』

と言った。

まだなんの話かはわからない。

浅地さん

『ありえないスピード出世をさせてやる。お前にミスは許されない』

少し意味が分かった。

それにしても、この人はいつだって船橋のミスは許す気がないらしい。

しかし、具体的にはどのようなプランなのか。

浅地さんは確かにかなり勢いがある先輩だが、浅地さんの上にも何人も上司がいる。

浅地さんと店長の間にも、まだ4人ほどいる。

当然、人事権はない。

今回の無茶振りも、浅地さんが強引に仕掛けて実現したものだ。

ここは大手グループで安定はしているが、出世となると大手らしく段階を踏んで時間がかかる。

店長ともなると、10年選手もザラだ。

僕はビールを頂きながら、その辺りの疑問をぶつけてみた。

すると浅地さんは

『強引にお前をおす。絶対に間違いないからと。

さらに今の店長が近々退職する。

そこで椅子が空くだろ。

今後前をどんどん責任ある仕事を任せて、お前が全てミスなく成功させる。

それで本社の社長だったりが任せた俺を評価して一気に俺がマネージャーになる。

人事権が出るからそこで一気にお前も引き上げる』

『俺がやることは全力でお前をおすことだ。』

随分と都合の良い話だった。

全力で酔っ払いながら本気でこんな話をしてくる浅地さんを僕は好きなようだ。

僕は乗ることにした。

その日は、昼過ぎまで浅地さんと仕事について語り合って飲んだ。

これから僕が手をつけていく、責任ある仕事とはなにか。

  • 女の子の管理
  • ホールの全体管理
  • 目標売上の達成
  • トラブル対応(一緒に)

この四つを強く意識しろと言ってきた。

トラブル対応が”一緒に”と言うのは、浅地さんはまさに夜の人間っぽさが出ている
武闘派なので、トラブル対応は混ざりたいみたいだ。(笑)

特に女の子管理についてとても熱心に語られた。

  • 心を鬼にしろよ。
  • 売上が全てだ。
  • 感情を挟むな。
  • かわいそうとか思うな
  • 俺クラスになると色管理だって出来るし現にしている子もいる
  • 大変だぞ
  • センスがいる

このようなことを繰り返し、リピートだ。

今思うと、とても大切なことだとはわかる。

そして、この先船橋は浅地さんがリピートまでして伝えたかった内容を
本人がドン引きするほど達成し、「お前は人の心がないのか?」と言われるまでになる。

それはあんまりだ(笑)と今でも思っている。

余談だが、僕は浅地さんが摂取するアルコールのおかげで、短時間睡眠でも仕事が出来るようになった。

次の営業日、ミーティングに浅地さんがいない。

どうやら本社に行っているようだ。

店内も盛り上がってきた21時頃、浅地さんが戻ってきた。

なんと、僕を飛び級出世させるよう掛け合ってきたようだ。

その行動力は尊敬に値する部分がある。

当然お偉いさんがその場で首を縦にふるわけもなかった様だが、検討材料になった様だ。

それも驚きだ。

次の日、店に本社から事例が来た。

異例の出世だ。

4階級、飛び級。

これはこの会社で言うと、昇給試験にノーミスで通ると2年かかるものだ。

僕はまだ、入店から半年足らずだった。

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