ep13:小さくて完全な勝利を手にする船橋-夜の世界の片隅で-

第1部:船橋ブラストーリー

営業が終わり、ミーティングも終わった。

どんどんスタッフが帰っていく中、浅地さんと船橋だけはホールに残っていた。

浅地さん

『船橋も飲めよ!』

そういって、お客様用のグラスに樽ビールをついで持ってきた。

営業中はキャストさんとお客様が腰をかけているソファーに向かい合うように座った。

『状況わかってるよなぁ?』

僕は、いきなり何を言い出したのか全くわからなかった。

しかも、なんかちょっと脅迫めいた喋り方だ。

(のちにただ酔っ払っている時の喋り方がこういう喋り方だということを理解する)

船橋『???』

浅地さん『とぼけるなよ!同期組だよ同期組!
普通えいきの方が先に色々任せられてるのにまだえいきキッチンだろ?
船橋の次の日に入った早川なんてキッチンの補助だよ』

船橋『ええ、実力の世界じゃないんですか?』

僕は、多少天狗になってた。

浅地さん『おい、あの二人はまだホールとかやってないんだから実力の差があるかなんてわからねーだろうが』

確かに、浅地さんのいう通りだ。

船橋『はい。でもどうしろと?』

浅地さん『お前、自信あるのか?』

船橋『当然です。誰よりも出来ると思います』

浅地さん『お前、バカにすんなよ。なら試すからな。ミスは許されない』

浅地さんは推定10杯目のビールも手伝い、ヒートアップしている。

一体何を試されるのか、そしてミスは許されないというのも気になる。

お得な挑戦

翌日、営業前のミーティングで浅地さんが突然

『店長には話してある、今日からえいきと早川をホールに出す』

と宣言した。

船橋は昨日の話しを思い出した。

役職が浅地さんより上の人が

『キッチンはどうするの?』

浅地さんがすかさず

『おれが入る』

皆驚いた。

正直キッチンなんてものは誰でも回せる。

浅地さんがキッチンに入ることにより、ホールの戦力がかなり落ちる。

さらに、今日からのホールデビュー2人だ。

役職ある人たちは反対する。

自分たちの労力が増すからだ。

それに、情けないことにトラブル対応は全て浅地さんがこなしている。

浅地さんが衝撃の一言を放つ。

『船橋が全部こなすから』

『しくじったら降格させるんで、今日はそれで行きましょう。』

なんと、いきなりホールの全権を与えられ、トラブル対応から全てのケツになり
ホールデビュー2人と、役職ある幹部の人たちもまとめて、
新人船橋が店を1日回すことになった。そして、今日しくじると降格らしい。

船橋にとって一見理不尽とも見えるこの状況だが実は大チャンスである。

こんなもの、100人いたら95人くらいは失敗しそうなものだ。

もし、失敗したところで致命傷になるわけがない。

成功したら大金星だ。

そして時間は朝5時。

営業終了ミーティングも終わり

結果

船橋は、成功した。

これは、同期競争の完全な終焉を意味した。

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